大正ロマンと純和風テイストを取り入れ、想いをカタチにする
骨董の建具と水屋箪笥・飾り棚が壁一面に並んでいる、I様邸の「メインディッシュ」と言える空間。キッチンとは間仕切障子で区切ることができるようになっています。I様邸では主要な窓すべてに、内窓サッシを取り付けています。夏の強い陽射しが照り付ける南側と西側には「遮熱LO-Eガラス」を採用することで、より高い遮熱性能を持たせています。また、I様のお住まいはマンションの最上階ということで、長い時間を過ごすリビングダイニングの天井部分に、調湿性や耐久性に優れ、環境にもやさしい天然ウールの断熱材を使用することで、天井からの熱気を防ぐようにしています。また壁の仕上げに使っているシラス壁も、断熱効果はありませんが、湿度を調整することで体感温度を下げる効果がありますので、暑さ対策に一役買っていると言えるでしょう。
空間のスパイス
差し色としてワインレッドの扉を選んだキッチン。その横には、素敵な小物をたくさんお持ちのI様のために小物を飾る造作格子棚をご提案。I様お手持ちの器たちが誇らしげに並んでいます。格子棚の背板は障子仕様なので、裏側からの影もインテリアになります。自然素材で囲まれた空間は、ナチュラルな色合いで落ち着いた雰囲気に仕上がる反面、単調になってしまい物足りなさを感じる場合があります。今回のリフォームでは、要所要所に空間のスパイスとなるような仕掛けをつくることを考慮しています。例えば様々なカタチの「格子」の活用。所々にアクセントとして格子を取り入れることで、骨董家具とも調和しながら、主張し過ぎずに家全体の統一感を高めています。そして「差し色」を活用すること。単調な色合いの空間に、うるさくならない程度に差し色を活用することで、空間のアクセントとなり、暮らしに彩を与えてくれます。その他にもI様のコレクションを飾るコーナーを作ったり、既製品でもより素材感のあるものをチョイスしたり…。そんなスパイスを散りばめることで、自然素材をより生かすことのできる空間デザインが可能になるのでないかと思います。
作家もののタイルがお客様をおもてなし
初めて来たお客様にとっては、期待感が高まる空間です。唐津の陶芸家・中里隆氏がデザインした床タイルでお出迎え。張り方にもこだわっています。玄関収納の箱組には合板を使わずに杉板を剥ぎ合わせたものを使用。シックハウス対策や調湿効果を考慮しています。
ホテルライクでラグジュアリーな雰囲気に
洗面台のタイルには琥珀色のガラスモザイクタイルを採用。間接照明で照らすことで、華やかな雰囲気を醸し出しています。洗面カウンターは、栗の耳付材(木の皮の部分を活かした材)を使用。壁・天井の仕上げは和紙壁紙。正面の壁のみアクセントとなるように色違いで仕上げています。洗面所の床には肌ざわりのよい竹タイル。あたかも温泉旅館にいるような雰囲気に仕上がりました。浴室/シンプルで高級感のあるデザインのユニットバスをチョイス。浴室ドアの脇にはFIXガラスを取付け、採光を確保しています。
骨董家具と調和する無垢材のよさを最大限に生かした書斎
壁・天井はシラス壁塗り。壁はグリーン、天井はホワイトと色を変えることでモダンな雰囲気に仕上がりました。コーナー部分にはI様のコレクションを飾る飾り棚を設けました。また今回のリフォームでのポイントのひとつが「建具」です。ベテラン建具スタッフが担当しました。様々なデザインの建具に対して、計画段階ではベテランならではのアドバイスがあり、また製作に関しても、細かい部分まで気を配った美しい仕上がりの建具を作ってくれました。またI様邸では、I様が骨董店で見つけてきた骨董建具を二ヵ所に採用しています。ここでも経験を生かして、全く違う用途で使われてきた骨董建具を微妙に調整しながら、何の違和感もなく取り付けてくれました。
「あたりまえ」に選んだ無垢材・自然素材
I様がお持ちの骨董の家具や器、絵画などはどれも存在感のあるものばかりです。それらを包み込む空間が、例えば薄い板を貼り付けたような床材や何々風、何々調のビニールクロスなど、表面的にお化粧したような建材で囲まれてしまうと、お手持ちの家具の存在感は薄れてしまい、きっと魅力のない空間になってしまうと私たちは考えました。I様にもそのようにお伝えしたところ、やはり同様の思いを抱いていました。またI様は以前から自然素材について興味があり、傷が付きやすいこと、反りやひび割れが生じること、などのデメリットがある上で、それを上回るような調湿効果やここちよい肌ざわりなどのメリットがあることもご理解されていました。よって今回のリフォームでは自然素材を、「あたりまえのもの」として採用することになりました。床には30mm厚の杉板を使用。既存のフローリングの上に直張りすることでコストダウンをはかり、無駄な廃棄物を出さないという環境配慮も…。水工房定番のシラス壁にはワラスサを入れることで、より素材感を楽しめる壁面に仕上がりました。和紙本来の持ち味をそのままに、撥水性、防汚性をプラスした「玉紙」を壁紙に多く採用しました。
担当者コメント
LIXILリフォームショップ水工房
I様は空間のイメージをきちんとお持ちでしたので、お打合せではそのイメージを元に、より空間の魅力が増すようなご提案をさせていただきました。 そのご提案は快く受け入れていただいたものもあれば、時には却下されることもあり…、 逆に私たちからI様への反対意見を受け入れていただいたりしたこともありましたが、 そうしたお打合せを重ねることで、目指す住まい像を共有することができ、 I様の想いは少しずつカタチになっていきました。