母が処分してと出してきた本の中に「辰巳芳子」編の「天塩にかけた私の料理」がありました。
この方の「にんじんのスープ」を病院の待合室でみたことがあって、そのレシピがあるかしらと思いつつ手に取ったのでした。
そのあたりを探し出そうと思いつつ前書きを読み始めたら、すごいことが書かれていました。
「この本をお使いくださる方に、切にお願いもうしあげることがございます。それは、つくりたいとお思いになるところだけ拾い読みせず、一度は始めから終わりまで通読していただきたいのです。つくりたいところだけ拾うというとり組み方は、自分のしていることが、ほんとうにはわかっておらず行動する方の動きに似ているところがあるように思います」
「通読してのち、必要に応じた頁を開きますと、料理と仕事の位置づけがおのずから、つかめてまいります。これで、はじめて、真の意味で、仕事の段取り、回転ができる方となり、年と共に仕事は掌中に、楽しみと喜びは心中に宿ります」
この後に書かれていることはもう哲学的レベルで、食の大切さを説かれています。「食はあらゆる文化の母胎」と悟り、正しい食生活で心地よく生きてくださいますように、と。
そこまで書かれていればと、260余点の料理本を最初から読み始めました。シルバーウィークの午後のことでした。
それにしてもレベルの高い内容です。
長いこと15分ママを自認していた私です。時間がかけられない分調味料だけは本当にいい物を使ってきましたが、この本を読むとガーンと頭を叩かれたみたいな気分になったのでした。
時間的余裕ができた今、お出汁もとってはいますが、これほどまでに繊細にとるものか、そしてそれを使った清まし汁や味噌汁の熱の入れ具合まで、自己嫌悪に陥りました。
「1日が10日、10日が100日、1年が10年、10年が一生。化学だしで食べる人と、かりに味はそこそこでもしっかり自然のだしからつくったものを食べた人の生涯を比べてみてください。」あ~あ、誠でございますね。
この本は芳子さんのお母さまが1960年に書かれたものを、時代に即さない物を直されて1992年に出版されたものですので、それでも20数年たちますから、今風でないと言えばいえますが。
それにしても基本はかわらないです。
美容室で読む若い方向けの本のレシピは、「チン」が多くなりました。時代も変わりましたが、人の食に対する意識の方が大きく変わったのだと思うのです。
手間暇かけなければ食べられなかった時代から、外食も中食もなんでもありの世界です。コンビニの出現が世の中の結婚事情にも影響したと思うのは私だけでしょうか。
お出汁の取り方から始まりただ今半分まで制覇しました。「天しおにかけた私の料理」読み終えましたら、ひとつふたつと丁重に心をこめて作りたいと思います。
我が家の若い2人の健康のためにもとあらためて思ったのでした。
この本は夫の妹が母に贈った物です。
依田 美恵子
軽井沢・佐久で建てる外断熱・省エネ住宅 中島木材の家
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