昨年12月のこと、1階の書棚の本をごっそりと処分した。その中に懐かしい東京の書店のカバーを付けた本が目に付いた。
私はカバーが付いたままだと、取り扱いにくいので読む時にはずしてしまうから読んでないということか。
開いて1ページ読んで記憶にない・・・・読んでない本だと確信した。
加賀乙彦著「湿原」の上下である。1985年11月発行・・・・・その頃半年に1度のペースでスクリーングに状況していた頃だ。
まあこんなに重い本を買って帰ったものだと思うが30年近く前のその日の記憶がない。
加賀乙彦さんのその後の作品は欠かさず読んでいるつもりだったのに、その原点となるべき作品だったのにと苦笑いしてしまった。
1985年から1990年頃は人生の中で一番多忙な日々だった。そんな事を思いながら過去の自分からのプレゼントと思うことにして、年末年始の合間隙間に読んだ。
中身は・・・・・重い。最初新年を前にして、自分の気持ちが耐えられるかなと案じもしたが、その心配もなくぐいぐいと引きずり込まれたのである。
この小説の舞台や年代がそのものズバリ・・・・私たちの青春の年代だったから。
私たちの大学受験の年、東大は入学試験を取りやめた。まさしくその年である。
ちょうど今頃の季節、あの安田講堂の時計台に放水されるテレビ画面が今でもはっきりと目に映る。
大学紛争と新幹線爆破事件・・・・冤罪をあつかっている。
戦中戦後のまだ貧しかった時代・・・・そんなものもを織り交ぜながら話は進む。
冤罪というものがどんな過程で作られていくのか・・・・・一般の市民だっていつそうならないなんていえない。
そして塀の中の生活・・・・見聞きする機会はまったくない。
この小説がどの程度に「本当」なのかわからないけれど、かなり実際に近いのではないか、そんな思いがした。
きっと30年前に読んだよりも、今読んだほうが、私の中の経験がこの本を深く読ませたと思う。
最後がハッピーエンドだったから、読んでいて救われたのも事実。
どんなに忙しい日々でも、就寝前たとえ10分でもと読み続けた実に読み応えのある本であった。
依田美恵子
軽井沢・佐久で建てる外断熱・省エネ住宅 中島木材の家
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