食習慣・運動習慣・喫煙・飲酒等の生活習慣で発症や進行に関与する疾患の「生活習慣病」はご存じだと思いますが
住戸内が寒いことに起因する高血圧や循環器疾患などを「生活環境病」と言います。
この「生活環境病」について、国土交通省の「スマートウェルネス住宅等推進事業」では、2014年度から住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査を実施してきました。
そして、先に開催された報告会では、寒い住宅ほど座位時間が増加、活動量が低下し、高血圧や循環器系疾患だけではなく、高齢者の虚弱や認知症などの健康リスクが増加することが分かり始めています。
また今回は、断熱改修工事前後調査をもとに、住宅内座位行動および身体活動に及ぼす影響を分析しました。その結果、脱衣所室内が1℃以上低下した場合、住宅内の低強度以上の身体活動は4%減少、一方で、脱衣所平均室温が5℃以上上昇した場合は、住宅内の低強度以上の身体活動は7%上昇することが判明しました。
そして今回の調査では、脱衣所の室温を改善するには暖房使用も有効な手段ですが、断熱改修も非居室の温熱環境改善には有効であることが分かりました。
また、断熱改修工事前後調査の分析から、適切に暖房を使用し室温を維持することで、住宅内の転倒リスクを低減できる可能性があることも新たに分かりました。
今回の報告会では、「高齢者ほど、女性ほど、室温が低いことによる血圧上昇量が大きい」、「喫煙や飲酒などの習慣がある、高血圧、運動習慣がない、といったハイリスク者ほど断熱改修による血圧低下の恩恵が大きい」、「総コレステロール値が基準を上回る人は、室温が18℃以上の住宅に比べて、12~18℃で1.8倍、12℃未満の住宅で1.9倍と有意に多い」といったエビデンスが報告されました。
建築学と医学の連携が進み、エビデンスが明らかになりつつある今、世界の医学専門誌への発信も増えたので「生活環境病」の認知が広がってきています。
脱炭素や省エネといった観点だけでなく、健康に影響を与える重要な要因として、住宅の断熱化を推進する潮流はより大きなものになっていきそうですね。
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